キャリバー解説 キャリバー解説

Patek Philippe Caliber 350

Patek Philippe Caliber 350


350 仕様

キャリバー径28mm 厚み3.5mm
生産年1970年 生産終了不明
生産数不明 石数28石
振動数6振動 毎時振動数21,600振動
持続時間45時間 テンプモノメタルジャイロマックステンプ
ヒゲゼンマイブレゲヒゲゼンマイ 搭載モデルRef.3573、Ref.3569、Ref.3586、Ref.3585

自動巻き。パテックフィリップ社が巻き上げ効率の更なる向上を目指して新たに開発したムーブメント。 通常見慣れた半月状のローターもなければリューズも受け側に配されるという、異色ともいえる設計が特徴。




1.自動巻輪列受 2.地板 3.香箱受 4.輪列受
5.二番受 6.秒カナ受 7.ローター 8.香箱
9.二番車 10.三番車 11.四番車 12.中間車
13.ガンキ車 14.丸穴車受 15.中間車受 16.丸穴車
17.ギチ車受 18.小鉄車 19.日ノ裏車 20.筒カナ
21.短針車 22.アンクル 23.アンクル受 24.角穴車
25.ギチ車受 26.日ノ裏押え 27.テンプ 28.テンプ受
29.巻き上げ中間車 30.巻き上げ中間車 31.巻き上げ中間車 32.巻き上げ中間車
33.巻き上げ中間車 34.逆転止め爪 35.ローター切替車 36.巻芯


まずは受け側から全体を見ていくことにしましょう。


ゼンマイが収められている香箱、パテックフィリップお得意のジャイロマックステンプ、各歯車類などは、非常にオーソドックスに配置され、一見するとさほど特異なムーブメントとは思えないほどです。



一番受には例によってムーブメントに関する様々な情報が刻印されています。

28石が使用されていること
ムーブメントの製造番号
キャリバー”350”
パテックフィリップ銘
ジュネーブシール
温度誤差、等時性、および5姿勢による調整などです。



6振動ということもあり、
テンプは十分な大きさがあります。

歯車の配置は秒針がつく四番車が中心に来るいわゆる”本中三針”の設計です。



テンプはジャイロマックス式。

ヒゲゼンマイはブレゲ巻き上げひげ。



続いては文字盤側を見てみます。


中心に長短針車と日ノ裏車があることは普通ですが、巻き芯が横方向にないために、針合わせの機構が文字盤側から見ることが出来ません。



Cal 350の一番の特徴であるのがこのローターでしょう。
通常の半月型の錘ではなく、内側に歯の切ってある円形のリングに対して半円状の錘が取り付けられています。
円形のリングは3本のネジで文字盤側より固定され、錘は6個のセラミック製ボールベアリングによって回転する仕組みになっています。




円形リングに切られている歯は文字盤側より見える切り替え車と噛み合い、その回転運動をゼンマイへと伝えています。




自動巻きに当然あるはずのローターを固定しているネジが中心に無く、輪列受けが綺麗に見えることからも、ローターをはずした状態で受け側を見るとまるで手巻きのムーブメントのような印象さえ受けます。



輪列の配置を見ていきましょう。
上にある香箱から中心にある二番車、左隣に三番車、中心に四番車と来るところまでは一般的ですが、ガンギ車の前に中間車が追加されています。
おそらくは四番車の次にガンギ車を持ってくると、アンクルとテンプの配置に無理が生じると判断したのでしょう。
自動巻きとセンターセコンドを両立させることは意外にも難しいことがお解かりになると思います。



ムーブメント左側が自動巻きの巻き上げ機構です。
切り替え車からの力は中間車3枚を介して減速され、角穴車に伝わります。
右側には垂直方向に立っている巻き芯が見えます。
ゼンマイを巻き上げる力の伝わる経路は、自動巻き機構と巻き芯それぞれ左右に振り分けられている様子がお解かりになると思います。




自動巻き機構のクローズアップを見ると、逆転防止のための爪と、リューズでゼンマイを巻き上げた際にその力がローターへ伝わらないようにするための遊び車が所狭しと並んでいます。 
ローター自体が輪列受けの上に乗っかっていないおかげで、自動巻き機構の歯車は通常の輪列と同じように横に並んでいるだけですが、それにしても現代の目で見ると部品それぞれがずいぶんと大柄です。



巻き芯は通常とは異なり、裏蓋側に配置されるので長さも短く、また形状も特殊です。
キチ車はあらかじめ取り付けられていて、通常”カンヌキ”に相当する仕事は巻き真に挿入されているコイル状バネで行い、”オシドリ”に相当する仕事はダルマ状のバネで担っています。




パテックフィリップの自動巻きムーブメントは12-600AT、27-460と続きます。
何れのムーブメントも両方向巻き上げのローターであり、その効率も良いというのが定説です。

しかし、流行は紳士用の自動巻きにも薄さ(エレガントさ)を求めるようになっていきます。
たしかにパテックフィリップでもその要求にこたえるべく’70年よりCal 28-255をラインナップに加えます。
2針でカレンダーも装備されたCal 28-255は厚みが2.55mmと、現代の目で見ても薄いこのムーブメントはしかし自社製ムーブメントではありませんでした。

そこでパテックフィリップは改めて自社による改良を求めて開発を進めたのでしょう。
‘68年にはリング式のローターによる自動巻き機構に関し特許を取得、そして完成したのがCal 350でした。

厚みに関しては28-255に及ばないものの、27-460からは1mmも薄くなり、センターセコンドを装備した点も含めて、 新しいデザインに応えられるものとの期待があったのではないでしょうか。

ところがその後のCal 350の評価はあまり芳しいものではありませんでした。
まずは特許まで取得した自動巻き機構が思ったほどの効果を得られなかったことでしょう。
これは後に片方向巻き上げ式にマイナーチェンジしてCal 1-350として改良を試みています。

次にリューズが裏蓋側に位置する点でしょう。
たしかにケースにリューズが出ていないとスマートな印象を受ける場合もありますが、逆に落ち着かない印象を受けかねません。
操作性においても腕から外さないと操作が出来ないことになりますし、また防水性の観点からしても不利になってしまいます。

結果としてより薄さを追求したCal 240、センターセコンドとカレンダーを装備したCal 310 SCの登場をもって
Cal 350は静かに表舞台から姿を消していきました。
パテックフィリップのムーブメントの中でいささか理論が先行してしまった感はありますが、
現在となってはその時代において考えられる最大の技術をもって開発されたことを評価しても良いのではないでしょうか。



Cal. 350 搭載モデル


カラトラバ Ref.3569
ブランド PATEK PHILIPPE
Ref 3569
Cal 350
年式 1970
コンディション C: Average - 使用感もしくはキズあり


ローターをムーブメントの外周に配置することにより薄型化に成功し、且つリューズをケース裏に取り付けとしたキャリバー搭載です。外周ローター巻上げ方式(両方向)で、特許も取得しています。 1979年から1985年の間に10,000個生産され、ジャイロマックス・テンプに耐震機能搭載します。ケースとダイアルは見事なバーク仕上がされ、ベゼルとラグのポリッシュ仕上とのコントラストが絶妙です。

仕様

ブランド パテックフィリップ
商品名 カラトラバ
型番 Ref. 3569
キャリバー Cal. 350
年式 1970
サイズ 36mm
ダイアルカラー シルバー
ムーブメント 自動巻き
ガラス素材 ミネラル
ケース素材 WG
ベルト素材 アリゲータ
仕様・特徴 バークフィニッシュ・裏リューズ
コンディション C: 使用感もしくはキズあり

Cal.350 ムービー

コンテンツ提供: PP TIMES SQUARE   時計技術者: Arai

※このコンテンツは2009年にPatek Philippe Owners Club会員に提供されたものです。