キャリバー解説 キャリバー解説

Patek Philippe Caliber 240PS.IRM.C.LU

Patek Philippe Caliber 240PS.IRM.C.LU


240PS.IRM.C.LU 仕様

キャリバー径31mm 厚み3.98mm
生産年1993年 生産終了未定
生産数不明 石数29石
振動数6振動 毎時振動数21.600振動
持続時間48時間弱 テンプジャイロマックステンプ
ヒゲゼンマイ平ヒゲゼンマイ 搭載モデルRef.5055G、Ref.5054、Ref.5015、Ref.5085、Ref.5712

自動巻き。Cal240をベースにパワーリザーブ、月齢カレンダーのモジュールを搭載したプチコンプリケーション。

文字盤を外すと最初に月齢が目に入りますが、全体的にはコートドジュネーブ模様も綺麗な受けでカバーされているために、パワーリザーブやカレンダー周辺の機構がどのようになっているのかはわからないようになっています。 このあたりのデザインは従来のCal 240 Q永久カレンダーなどには見られない設計年次の新しさを感じさせるところです。

では、早速受けを外して各機構を見ていくことにしましょう。


モジュールの上半分はパワーリザーブ機構です。
ベースであるCal 240の香箱から左端のパワーリザーブ歯車まで実に複数の歯車を配している様子が伺えます。
続いてパワーリザーブの針がどのような仕組みで作動するのかを解説していきましょう。



ゼンマイがリューズ、もしくはローターで巻き上げられると、ゼンマイの中心にある香箱芯のみが回転します。 香箱芯と直結している歯車⑥は香箱に固定されている歯車⑤を介して歯車④を左回転させます。

さらに歯車③、②と続いて最終的にパワーリザーブ歯車①は少しづつ右に回転していきます。

パワーリザーブ歯車①を見ると約半分しか歯先が切っていないことにお気づきになるでしょう。
ゼンマイが一杯に巻き上げられた頃には歯車②が回転してもパワーリザーブ歯車①は空振りをし、文字盤上の針も動きを止め、ゼンマイが一杯に巻き上げられたことを知らせるのです。



ゼンマイが一杯に巻き上げられると、ゼンマイの解けようとする力は香箱を回転させ、時計の輪列に力を伝え、テンプを動かし時計は時を刻み始めます。

香箱の回転は歯車⑧にも伝わり、歯車⑦を動かします。 歯車⑦に固定されている歯車⑤は全体が左回転すると共に歯車⑥によって歯車⑤自身も左回転します。 そのために次の歯車④は右回転をし始めます。

そうすることで歯車③、②もゼンマイ巻上げ時とは逆に回転し、パワーリザーブ歯車①は左回転していき、文字盤上の針も徐々に赤い指標に近づき、ゼンマイが残り少ないことを知らせるのです。


Cal 240 PS IRM C LUのパワーリザーブ歯車は円形の外周約半分だけに歯を切っています。 これは一定以上になると歯の噛み合いが空振りすることでインジケーターの針の動きを止めるようにしているためです。

歯車の中心でスリップさせる機構を設けたりする場合もありますが、Cal 240 PS IRM C LUの構造はその点において非常にシンプルです。



モジュールの下半分がカレンダー機構です。
Cal 240は本来スモールセコンドを考慮しない二針として設計されているために、四番車の芯を延長しそのままスモールセコンドとしています。
そのために月齢とカレンダーの配置も独特な位置となっています。

ではカレンダー機構の仕組みを解説していきましょう。


月齢歯車とカレンダー歯車は共に短剣車から力を伝えています。 12時間で一周する短剣車を減速させ、月齢送り車とカレンダー送り車を24時間で一周させているわけです。

左側のカレンダー送り車にある爪がカレンダー車を送ろうとしているところです。

爪は固定されておらず、歯車にある小さなピンが爪を押して歯先を送るようにしています。 これは針合わせを逆回転させた場合、爪が歯先をいきなり破損してしまうことがないようにするためでもあります。

また、この爪と歯先が接している状態で月齢の早送りをおこなってしまう事が如何に危険かということもお分かりいただけると思います。


次の写真は向かって右側の月齢送り車にある爪がまさに月齢中間車を送るところを示しています。
上の写真と見比べると、カレンダー送り車と月齢送り車の爪の方向はほぼ反対にむいていることがわかると思います。
これはそれぞれの歯車を送る時間帯が約12時間ほどずれているためです。
カレンダーと月齢のおくりに時差が設けられている理由のひとつはカレンダーを送る際に生じる抵抗を分散するためです。
そしてその時差がCal 240 PS IRM C LUで約12時間とされているのは、月齢は月の満ち欠けを表示するものであり、光り輝く夜中に動かすのではなく、日中に動かしたほうがイメージ的に一致すると考えたからではないかと思うのです。
このCal 240 PS.IRM.C.LUの特殊なところは一般的な月齢カレンダーと違い月齢車を直接送らずに中間車を介しているところです。
通常は新月から次の新月までの期間(朔望月といいます)を29.5として月齢車の歯数を59枚としていますが、Cal 240 PS.IRM.C.LUの月齢歯車の歯数はどう見ても59枚よりも多いのです。

では、なぜは数が多いのか、その理由について検証してみましょう。


月齢中間車は7枚の歯車に16枚のカナという構成です。
月齢送り車の爪は7枚の歯車の歯先を一日一枚送りますので、月齢歯車を一日16/7枚送ることになります。


次に月齢車の歯数を数えてみますと135枚あります。
月齢車が一周するのに必要な日数を計算するには
月齢車の歯数 ÷ 月齢中間車一日の送る歯数
135 ÷ 16/7 = 59.0625日
月齢車は朔望月が二周期分ですから一周期は 29.53125 日ということになります。
ではなぜ29.53125 日という数字が出てくるのでしょうか?
天文上、月齢は正確には29.5日と割り切れないということまではご存知だと思います。
月の周期は一定していないもののその平均値(平均朔望月)は29.530589日となっています。
つまり、29.53125 日という数字は天文上の平均朔望月に出来得る限り近づけた歯車設計によるためということがわかるのです。


カレンダー歯車の歯数は31枚。
山型に切られているのは、次に送るべき歯車がなく、カレンダーの針を決められた位置に固定し、表示させるためです。



一見するとエキセントリックに配されたスモールセコンドや月齢カレンダーが、オーソドックスなデザインに親しんだ愛好家の方から見たら不思議な印象をもたれるかもしれません。 しかし、月齢とカレンダー針が同軸に配置されている点などは往年のCal 27-460Qから続くデザインを継承しているといえます。 また、モジュールはCal 240をベースに極力機械の厚みを押さえた点(年次カレンダーCal 315 S IRM QA LUの厚みは5.22mm)や、月齢の精度を見ても専用設計であり、けっしてデザイン先行ではないこともわかります。 現行パテックフィリップのラインナップにおけるプチコンプリケーションの中で、240 PS IRM C LUはデザインと機能が不思議なバランスで成り立った、魅力的なムーブメントであると思えるのです。

 

Cal. 240PS.IRM.C.LU 搭載モデル


カラトラバ プチコンプリケーション Ref.5055G
ブランド PATEK PHILIPPE
Ref 5055G
Cal 240PS.IRM.C.LU
年式 不明
コンディション Near Mint - 多少の使用感、目立ったキズなし


コンプリケーションのエボーシュとして最もデザインのフォルムをスッキリと綺麗にデザイン出来るのが、 このキャリバー240ではないかと思います。 そのCal.240にパワーリザーブとカレンダー、そしてムーンフェイスの機能を追載し、プチコンプリケーションとして 1995年にデビューした5055です。 生産終了となってから早いもので4年が経ち、徐々にではございますが、市場での存在数も減りプライスもゆるやかに上昇してきました。 パテックフィリップ社の時計を愛用される方々にとってシンプルなカラトラバからコンプリケーションへと、 そのレベルを上げてコレクションされる最初の登竜門として、この時計の機能を堪能されてみてはいかがでしょうか? 操作は至ってシンプルでムーンフェイスやカレンダーはケースサイドのプッシュボタンを調整ピンで送る事、 パワーリザーブはゼンマイの巻き上げに合わせてゲージが移動する事、重要注意事項は機能を早送りする際の時刻、 これさえ守っていれば故障を導く事は考えられぬほど、このプチコンプリケーションはご使用しやすい時計として完成しております。

仕様

ブランド パテックフィリップ
商品名 カラトラバ プチコンプリケーション
型番 Ref. 5055G
キャリバー Cal. 240PS.IRM.C.LU
年式 不明
サイズ 36mm
ダイアルカラー ブラック
ムーブメント 自動巻き
ガラス素材 サファイヤクリスタル
ケース素材 WG
ベルト素材 黒アリゲータ
仕様・特徴 WGディプロイメントバックル・パワーリザーブ・ムーンフェイス・カレンダー
コンディション B: 多少の使用感があるがほとんど目立ったキズはない状態

Cal.240PS.IRM.C.LU ムービー

コンテンツ提供: PP TIMES SQUARE   時計技術者: Arai

※このコンテンツは2009年にPatek Philippe Owners Club会員に提供されたものです。